ふくやま美術館 2019年度 夏季所蔵品展「高橋 秀」

2019年7月15日月曜日

アート見聞録

モリス展のついでにみた常設展示。

今回は美術展あるある「お目当てじゃない作品に感動する」のパターン。

展示タイトルだけみると高橋秀の作品がメインかと思いきやその他の展示も充実していて大変良かった。

展示構成は次の通り
第1室 「高橋 秀」46点
第2室 「日本の近代現代美術」18点
第3室 「ヨーロッパ美術」19点
これに加え常設展示室と同じ二階にある茶室を第4室とし、茶器が四点ほど展示されていた。

ふくやま美術館といえば敷地内の公園にある屋外彫刻「愛のアーチ」が印象的。



高橋はこの彫刻の作者である。

作品は時系列で展示され、特に半立体の作品は写真や画像では、まったくその魅力が、わからないので実物の鑑賞をおすすめしたい。

第2室「日本の近代現代美術」では、お隣岡山県、大原美術館でおなじみ児島虎次郎をはじめ岸田劉生など絵画も良いが中央に鎮座した尾形乾山の茶器がよい。

光琳の弟というだけで、圧倒的に興味が惹かれる。

遊び人で派手好きだった兄とは対照的に、質素な生活を好む地味な人物だったらしいが作品をみるとどうも信じがたい(笑


乾山について、ほとんど知識がなく帰ってネットなどで色々見てみたが、さすがは美術館、他の作品にくらべても趣のある素敵な品であったと感じ入った次第。

そして、第3室「ヨーロッパ美術」

クールベ、ユトリロ、ドラン、ルオー、シャガール、ピカソにキリコと、これでもか!のお宝陳列。

そのなかで、ウジェーヌ・カリエールの「腕組みの座る女」と、ジョバンニ・セガンティーニの「婦人像」は見応えがあり大きな収穫だった。

カリエールの作品は代表的な技法らしい、霞みかかった茶褐色というか、大理石のような乳白色が印象的で、その画法による優しく柔らかい女性性の表出に驚かされる。

ヘンリー・ムーアのドローイングを観た時に感じた感動を思い出した。

これまた帰ってカリエール作品をネットでいくつか観たが、本作品はその中でも作家の特徴がよく出た素晴らしい作品だと思う。

セガンティーニは大原美術館所蔵「アルプスの真昼」が華やかで人気があり、作品としても優れているだろう。

展示作品は、おそらく裕福なクライアントからのオーダーによって制作されたと思われる肖像画。(あくまで推測)

「アルプスの真昼」と比べれば、地味な色彩で派手なドラマもない単なる肖像画だが、モデルの老女は気品に溢れ、画面から漂う気配が尋常ではない。

老女が積み重ねたであろう人生という名のドラマが気配を纏い語りかけてくるようだ。

本作品は華やかな画面の「アルプスの真昼」とは違い、視覚の呪いから開放された鑑賞体験を自動的に与えてくれる。

無いはずのものを感じさせる絵画の力を存分に味あわせてくれる、素晴らしい体験ができた。

怖くて家には絶対には飾りたくない名品である。

そんな訳で大変充実した鑑賞体験となった常設展示室。

モリス展を観ればプラス100円で鑑賞できるので、鑑賞することを強くお勧めしたい。


ふくやま美術館
夏季所蔵品展 「高橋 秀」
2019年6月26日(水曜日)~9月16日(月・祝)